吹矢術吹射道について


《吹矢の歴史》

日本における吹き矢術の発生は、まったく定かではない。

吹矢には狩猟用道具として発達と、暗殺用武器術としての発達、
娯楽用具としての発達の三種類が考えられる。

日本では弓矢を問わず、矢先に毒を塗り使用するという概念はありません。
軽い吹矢での殺傷力には、おのずから限界があり
狩猟用としての発達は記録に残っておりません。

暗殺用としての吹矢術は、その性質上極秘裏のうちに
伝承され稽古されたもので広く一般の知るところではない。

娯楽用としては江戸期から静岡県や愛媛県などで伝承があり、
現在も吹矢道具を伝えているところが存在している。
江戸期には盛り場の矢場などで、楊弓遊びと同じように
吹き矢遊びが庶民の間の娯楽の一つとして盛んに楽しまれていた。


《最近の吹矢事情》

新潟県高岡市で皮膚科の医院を開業されている樋口裕乗先生は、
日本における吹矢界中興の祖であり、
国際吹矢道協会の副会長をされています。

最近では日本スポーツ吹矢協会が組織され、
全国に支部組織を展開し、
吹矢を競技スポーツとしてとらえて活動しています。

また、これとは別に吹矢を武術・武道としてとらえ
修練している団体も各地にできています。


《私と吹き矢との出会い》

40年も50年も前の子供の遊びといえば
かくれんぼ、鬼ごっこ、探偵ごっこや
ビー玉、べったん、おはじき、オジャミなどが
思い出されます。

お正月なら凧揚げや、独楽回し、爆竹、
夏祭りのシーズンになると、金魚すくい、輪投げ、花火、
針金細工のゴム鉄砲や、小弓、吹き矢。

その頃から人一倍、飛び道具には執着心がありました。

昭和の終わり頃か、平成の初め頃か
、確かな記憶はないのですが
偶然に何かの雑誌で
新潟の方が吹矢の普及に携わっている記事に目がとまり
吹矢に興味を持ちました。
しかし、その時以来仕事の忙しさから
すっかり忘れていました。

平成10年の夏
新聞で再度吹矢の紹介記事を目にし
それを機に日本スポーツ吹矢協会関西支部に入会。

それから数年間は、競技吹矢に没頭し、
毎日朝晩、自宅内の特設射場で100射掛けをする.

翌年、東京で開催された吹矢の全国大会に出場し優勝。
その時は、優勝から3位までが全て関西勢が独占。

吹矢競技における関西勢の実力と、
他の狙的スポーツ競技、狙的武道武術にも精通した
吹射法の優秀性を
全国の吹矢士に知らしめた。


《日本スポーツ吹矢協会の制定吹射形》

その大会の少し前から、
日本スポーツ吹矢協会指定の吹射形が制定され、
それを推奨し指導する吹矢の指導員制度が始まりました。
呼吸法に則した正しい吹射形が、
正しい的中を生み出す。
このような考え方で、吹射形が出来たようです。

そもそも、的中競技である吹矢は、
協会推奨の正しい吹射形で行射すれば、
高得点がえられるという事ではありません。

高得点を得ることが出来た吹射形が
正しい合理的な吹射形であると考えるのが
一般的に正当性があると思われます。

制定吹射形を作るとするならば
的中率上位の吹き手の吹射形を参考に
的中に関する普遍的な身体運用法を抽出し、
呼吸法に合わせた吹射形にしなければなりません。

古来より弓術、剣術、柔術の世界でも、
その道に秀でたもののみが
その術の形を作り出していきました。
その形が合理的で優れていれば、
それが後世に連綿と受け継がれていくものです。


《武術としての吹矢術》

スポーツとしての吹矢は
的中の得点を競う競技です。
いわば記録の向上を主たる目的とし
その目的に向かって練習を積み重ねて行きます。

術としての吹矢は
的中における術理を解明し、
基本の技と心構えを身体運用法の形として作ります。
その形を繰り返し修練を積み重ねて行くことにより、
関連武術にも応用できる心身を作りあげます。

弓刀錬心舘道場では、
吹矢を単なるスポーツとしてではなく
武道・武術の一つとしてとらえ
吹矢術吹射道と称し、
日置流半弓術と同じ講座で平行し教伝しています。


《吹矢と日置流半弓術における身体運用法の類似点》

吹矢と日置流半弓術は、矢の形状が違いこそすれ
的に向かって矢を的中させることを目的としている
ことは同じである。

吹矢の場合は矢の推進力を得るものは
人体の肺の圧縮空気であるが、
弓術のそれは、弓の反動力である。

吹矢における矢は弓術における矢と同じような働きをするが、
吹矢の筒は弓術における弓と同じではなく、
弓術の矢に付いている矢羽と同じで、
矢の方向性をつかさどるものである。

このように吹矢の道具と身体の関係を考えると、
吹矢の場合は弓術以上に呼吸法が
大切な的中要素となる事が
理解していただけると思います。

吹矢を行射する場合は、
的に向かって先ず自身の足構えと体構えつくり、
筒に矢を挿入して、
呼吸法と身体運用法の調和を保ちながら
安定した吹射の機会をつくり
行射します。

弓道ではこの形を射法八節として体系化しています。

吹矢術吹射道の場合は弓道と同じく
その吹射法を八節で表現いたします。

@ 足  心
A 体  心
B 矢  心
C 昇  心
D 天  心
E 満  心
F 離  心
G 残  心


 《吹矢の威力を計測する貫通力実験》 

   8メートルの距離から、1グラムたらずの吹矢
  の矢を使い、某テレビ局番の組制作スタッフの
  要請により、武器としての吹矢の貫通力を試す
  実験をおこなった。

   的は350ml入りの缶ビール(アルミニュウム製)
  を少々振った状態で、高さ85cmに設置し、吹手
  である弓刀吹将子は座射にて吹射をする。

   この画像は、吹射直後に矢が缶ビールを貫通
   し、その衝撃で缶内の圧力が急上昇してタブが
  千切れ飛び、ビールが噴水状に天井まで吹き上
  がっているところです。

   この他にも貫通力実験の的としてミカン・リンゴ
  ペットボトル等を実験したところ、時速150kmで
  飛翔する矢には想像した以上に貫通力があるこ
  とが判明いたしました。

   吹矢の紹介番組の中で一般の視聴者に対して
  司会者の方から、「決して人に筒先を向けることの
 ないように注意してください」とのアナウンスを強調
  して流すように要請し、危険防止に配慮した。